ギフテッド仮免許中

45才で判明したギフテッドアダルトが思いついたことを書きます。

ヒューマン・ファクター

ヒューマン・ファクターを読んでいて途中で思ったのは、映画化は難しいだろうな、ということだ。イギリス人らしい行間の間のあるセリフ、転回、心理描写が映像でどのように表現するのか?恐らく難しいだろうと思う。

スパイ小説は読んだことがないのでわからないのだが、この本はスパイ小説ではなく、ある男の機微をスパイ小説の形で表したのだろう。

私が読んだのは新訳だが解説では触れられていなかったが、主題の一つに孤独=箱があるはずだ。

皆、箱の中で生きている。この社会は1m四方の箱が連なっているのである。
自分の周りに箱があることに気づいた時、孤独を感じるのである。

本来、人はその心を磨き続けると、孤独になっていく。その人が自分自身の頭で考え様々な事を体験し、あるときは苦しみ、あるときは楽しむ。このようなその人固有の体験があればあるほど、この心の特徴が際立ちある種の孤独感が増す。ユニークさがあればあるほど、人とは違っていく。

私がこの本を読んだきっかけは藤沢周平氏のエッセーに出てきたからだ。

『ここ数年の間に読んだおびただしいその種の小説の中で、記憶に残るものはといえば「ヒューマン・ファクター」一冊にとどめをさすのである』
グレアム・グリーン」小説の周辺

氏の作品も人情の機微が主題である。
主に侍ものがそうだが、その規矩の中で全うしていく武士の姿があり、そうせざるを得ない、そうすべし、という生き方を強いられる人格を描いており、最後の最後で規矩から解き放たれて本来のキャラクターを回復する。
藤沢周平氏の作品の主人公たちは影があるものの本質的に孤独ではないが、ヒューマンファクターでは過去・現在・未来と全面的に孤独である。

藤沢周平氏の作品からはどうしようもない孤独は感じない。